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17.農家は個人事業主です

現在、私が暮らす山口県周防大島町には、毎年たくさんの方が就農・就漁を目的として、相談に来られます。そこで私はいくつか質問をしています。

農業であれば果樹がしたいのか、野菜がしたいのか、どんな手法で取り組みたいのか。
漁業であれば貝類なのか魚なのか、どういった方法で漁をするのか。
偉そうに聞いていますが、実は私はあまり詳しくありません。
詳しくないと言っても、相談者さんの本気度や知識量などは、自営業者・個人事業主として判断できます。(とはいえ我が家の野菜は育てています。)

そう、農家さん・漁師さんになるということは個人事業主の道を選択するということなのです。

農業ですと土地を耕し、作物を育て、出荷または販売する。
大雑把に書きましたが、この過程の中でしなければいけないことがたくさんあります。
また、天候に左右されますので、思うように作業ができない場合もありますし、豊作・不作の年もあります。
正直、サラリーマン生活に疲れたからというだけで農業を始めると大変です。

誤解しないでいただきたいのですが、農家になるのを諦めさせようなんて考えはありません。むしろ逆です。
農家さんが増えることは大切なことです。むしろ増やしたいです。
全国各地で担い手不足ですから、興味を持ってもらえることは嬉しいことです。

だからと言って、簡単に
「農家デビューしまーす♪→思ってたよりハードだから辞めまーす♪」
では、せっかく農地を貸してくれた地元の方が、「こんな寂しい思いをするならもう貸しません」となりかねないので困るのです。

サラリーマンを辞めて起業することには二の足を踏む人が、農家にはなりたいと言うのは、ちょっと農業を軽く考えていませんか?危険じゃないですか?と思うのです。
特に就漁希望者より就農希望者にこの傾向が見受けられます(漁業はキツイというイメージがあるのかもしれません)。

「サラリーマンはイヤ、起業は不安、だから農家になりたいです。」
という思考は安易と言うより軽率です。そんなに農業が楽な仕事ならどこの田舎も担い手不足になどなっていません。
多分、その感覚の方は続かないと思います。

サラリーマンも農業も起業も楽ではありません。仕事はどの世界も大変です。
楽ではなく、自分が好きなことなのか、やりがいを感じられるかに重きを置いてください。

社畜なんて言葉もありますが、サラリーマンは福利厚生もあれば賞与もあります。
病気・ケガで入院してもサラリーマンなら傷病手当がありますが、個人事業主は自分が休めば、誰も代わりに動いてくれません。
個人事業主であれば、経営戦略も経理も営業もすべて自分でしなければいけません。
何よりも農業は自然と向き合わなければなりません。雨が降れば畑に出ても作業ができませんし、収穫となれば休むわけにはいきません。農業は自然と歩むものです。
当たり前のことですが、起業に関してはこういったことが考えられるのに就農となると、当たり前のことを想像できない方が一部にいらっしゃいます。

「じゃあ、どうすればいいの?」となりますが、まずはやはり情報収集です。ネットがあれば知識を得ることは都会に住んでいてもできます。
品種や栽培方法をいくつか候補に挙げたら、実践されている農家さんを訪れてお話を聞いてみたり、お手伝いさせてもらったりしましょう。本当にいろいろ見えてきます。
マンション暮らしでもプランターで栽培することで、育ち方を知ることができます。
新規就農支援制度の対象になる年齢なのか、専業農家でやっていくのか、半農半Xで生計をたてるのか、その場合のXは何をするのか。この辺も特にチェックしてください。

なかには「食べられるだけの収入があればいい」と言われる方がいます。貯蓄や商才のある方なら問題ないのでしょうが、大半の方は一生懸命頑張っても目標の収入に届きません。「食べられるだけの~」という考えでは、食べていけない可能性もあります。なのではじめから収入を得ることはしっかり意識してください。

「そういうことを考えるのがイヤだから田舎暮らしをするんです」という方もいるでしょう。ただ、あなたが仙人のような暮らしをするなら別ですが、田舎で暮らしてもお金は必要です。生活費はもちろん、住民税も年金も払わなければいけません。自治会費や近所のおじいちゃんが亡くなれば香典も必要です。
田舎は都会に比べて生活コストがかからないだけで「田舎はお金がなくても暮らせる」というのは間違いです。

そもそも日本人の美徳として、お金儲け=がめついと考えがちですが当然そんなことはありません。
例えば農薬をバンバン使った野菜が100円で、あなたが無農薬で作った野菜が150円だとします。お客さんはあなたの野菜を選ぶでしょう。それはあなたが野菜と一緒に「安心」という付加価値を提供しているからです。
お金のことを考えるのが後ろめたいと思うなら、お客さんに喜んでもらうことだけを考えてください。そうすれば自信をもってお勧めすることができると思いますし、あなたの農業収入に反映されるでしょう。

就農を目指す方の気持ちを萎えさせるのが目的ではありません。何度も言いますが、農業に限らずどんな仕事だって大変だということを覚えておいてください。
農家さんは作る喜びを知っています。お客さんの手元に届く喜びを知っています。

ラクそうだから農業を選択するのではなく、喜び・やりがいを見出してください。

 

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コメント

  1. ここ数か月で、移住フェアーや体験ツアーに参加し、よ~し移住するぞと心に決め、会社に今後の将来計画を申し出て、移住先を家族で相談しながらネット等を利用し住居探しを始めているところです。
    移転先で何をするか??もう楽しい生活しか思い浮かばず・・・・夕飯の魚釣りやお庭での野菜作りを想像する毎日です。ある意味就農、就漁??

    ふと、自分の子供の頃、お米の生産調整が始まった頃??かな、離農により住宅地になった場所に公務員の親父が土地を購入、小さな一軒家(平屋)を建てて引っ越しをしました。田園地域で最初に離農した小さな住宅地。しかも最初の入居者で文字通り田んぼの中の一軒家でした。親父は仕事の合間に知人が購入した区画で野菜作りを始めました、確かキュウリ、なす、大根、ジャガイモ、カボチャ、そら豆、トマトなど、一級河川の流域で鍬で土を掘ると野球ボールより少し大きいくらいの石がゴロゴロと出てきて、タネや苗を植えるまで大変な作業であったような記憶が甦ります。3軒分くらいの区画で収穫していた野菜は全て我が家の食卓に、ある意味偉大であった亡き親父に感謝しております。

    移住し小さな畑で野菜作りをしようと想像してますが、私はそのノウハウを一切引き継いでおらず誠に残念な思いです。
    実家に帰ったらまだ元気な母にいろいろ聞いてみます。

      • izutanifp
      • 2021年 12月 23日 2:43pm

      藪口さん

      お父様の素敵な思い出ですね。お母様からたくさん畑のお話を聞いてください。お母様も喜ばれると思います。

      また、移住先では世話好きな方々が野菜作りについて教えてくれると思います。
      周りの方々から「知恵」という財産を、後悔することのないようにしっかり譲り受けてくださいね。

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